リスケジュール(リスケ)の注意点!
~リスケに弁護士は必要か?

1 リスケジュールとは何か

リスケジュール(略して「リスケ」と言われます。)は、会社の資金繰りが厳しくなったときに、銀行等の金融機関と交渉して、一定期間の返済を軽減する「契約の変更」を行う方法です。

通常、資金繰りが悪化した会社は、まずはリスケを検討するのが通常だと思います。

2 リスケのリスク?

「会社の資金繰りが悪化した…」
「金融機関の返済を金利のみにしてもらえれば乗り切れる…」
「リスケを依頼しよう。」

このような考えに至る方も多いと思います。
実際に、当事務所にも、そのような相談で来られる方も多くいらっしゃいます。
しかしながら、リスケには、「リスク」もあります。
結果的にリスケを依頼するとしても、そのリスクを十分に認識しておく必要があると思います。

リスケの最大の問題は、一旦約定通りの返済をストップし、金融機関へのリスケを求めてしまうと、新たな借入れが極めて困難になってしまうことです。

一旦リスケを求めてしまうと、リスケの対象となっていない他の金融機関に対しても、同様に、新たな借り入れはできなくなると考えてください。

リスケをするまで、金融機関の約定返済を継続できていたのであれば、もしかしたら、すでに借り入れのある金融機関からの追加融資や、それ以外の新たな金融機関からの借入れが可能であるかもしれません。
このような追加融資により、現状の苦境を乗り切れるかもしれません。
リスケをスタートさせても、その後の事業活動において、新たな融資を受けることができないというのは非常に苦しいことです。
ほかの金融機関によく相談すれば、新たな融資が受けられたり、新規融資を受けられたり、既存融資の借り換えなどができることもあります。

もちろん、新規の借入れがすべて良い結果をもたらすかというつもりはありません。

新たに借りることができても、非常に高金利であったり、返済の条件が厳しいなどの場合は、かえって資金繰りを悪化させ、取り返しのつかないことになっていく場合もあります。
新たに借り入れる先が親族や親しい知人である場合など、無理して新たに借入れを行うことにより、人間関係にも大きな影響を及ぼす場合もあります。

あなたの会社にとって、「リスケ」を求めるのが最良の方法かどうかは、その時の状況によってケースバイケースで異なってくると思います。

どのような方法を選択するとしても、まずスタート時点において、十分な検討とシミュレーションを行う必要があることは理解してください。

3 リスケの交渉における注意点

経営状況により、金融機関への毎月の返済が苦しくなってきたときには、金融機関に対し、融資のリスケを願い出ることになります。

これは、あくまでも金融機関との「契約の変更」を求めていくということですので、会社の窮状を率直に説明し、理解を求めていくことが必要になります。

ここで、リスケにおいて極めて重要な点が二つあります。

(1) 金融機関の取り扱いは必ず平等にすること

金融機関は、他のところと比べて不平等な取り扱いをされることを極端に嫌います。
これは、担当者の立場に立って考えれば理解いただけると思います。

自分の銀行は、4月分から支払いを止められているのに対し、他行は4月分や5月分まで払っているとか、自分の銀行だけリスケを求められて、他行は繰り上げ弁済をしているということになれば、その怒りは相当なものとなります。

ところが、往々にして、上記のような事態が生じてしまうのです。
例えば、A銀行からの借入れは月60万円返済しなければならないのに対し、B銀行の借入れは、月1万円であったとします。
このような状況であれば、
経営者としては、「B銀行の分までは払えるけど、A銀行の返済を払ってしまうと給料の支払いができない。だからA銀行の分はリスケをお願いしよう。」という考えに至ることも理解できるのではないでしょうか。

このような事態が生じてしまうのは、理由があります。
経営者としては、リスケの交渉を金融機関と行うのは「負担」ですし、「しんどい」ことであるため、その対象は、できるだけ少ない方がいいと考えてしまいがちなのです。

先ほど述べた「一部の銀行だけ繰り上げ弁済をする」というのも、よくあることではあります。
複数の銀行から1千万円単位の借入れが残っているのに対し、1行だけが、残り10万円くらいまで減っていたとしますと、少しでもリスケの交渉の負担を減らすために、その銀行だけ「先に払ってしまおう。」ということになってしまうのです。

しかしながら、上記のケースは、いずれも、リスケ交渉において、最後まで大きな問題となって残ります。

まずは、「金融機関は、必ず平等に取り扱うこと」を頭に入れておく必要があると思います。

(2) メイン銀行がとても重要

さきほど、金融機関の「取り扱い」については必ず平等にするべきだと申しましたが、その中でも、「メイン」の銀行の存在は極めて重要なものとなります。

メイン銀行がどこになるのかは、ケースによって色々な場合があるとは思いますが、大体のケースでは、「貸付金額が最も大きなところ」であると思います。

「リスケをお願いする」においても、「経営改善計画を説明する」においても、まず最初にメイン銀行に説明し、理解を求めておく必要があります。

そのしておけば、次に別の金融機関にお願いに行ったときに、「メイン銀行さんもご理解いただいております。」という説明をすることができます。

他の金融機関は、(リスケによりもっとも大きな被害を受けている)メイン銀行が、その会社の「再建を支援していこう」と考えているかどうかを非常に気にしています。

したがって、リスケにおいては、どの段階であっても、まずはメイン銀行、そのあと他の金融機関へと進めていく必要があるのです。

4 経営改善計画の作成と金融機関との交渉

「リスケを求めていく」ことになれば、まずは、メイン銀行から順番に、会社の窮状を率直に説明し、一旦は元金の返済を停止するなどして、経営改善計画の作成を進めていくことになります。

もちろん、元金の返済を一時的にであっても停止するということは、金融機関にとっては大変な問題ですので、交渉は難しい場合もあります。
銀行担当者は、あなたの会社と変更契約をすることについて、「行内稟議」を経て、本店などの「決済」を得る必要があります。

そのため、リスケのスタート時点から、金融機関からは、たくさんの資料を求めて来られますし、それにできるだけ速やかに回答していく必要があります。

また、金融機関に相談すれば、「他行はどんな状況ですか。」と聞かれることも多く、都度、丁寧に説明していく必要があるのです。

最終的に立案していく「経営改善計画」についても、十分な検討を経て、実現可能な案を作成する必要があり、「机上の空論」のような計画は、すぐに金融機関の担当者から指摘されることとなります。

売上の拡大を計画しているとして、それがどのような内容で、現時点でどの程度期待可能か。
経費の削減は必要かつ十分で、しかも、上記売上の拡大を支えることができる体制があるか。
「経営改善計画」は、「未来の計画」ではありますが、これまでの「実績」(決算や資金繰り)に裏打ちされたものでなければならないのです。

このような経営改善計画を各金融機関に「平等」に説明するため、金融機関の担当者に一堂に集まっていただき、いわゆる「バンク・ミーティング」を開催することもあります。

また、金融機関からの指摘があれば、経営改善計画に、新たな内容を付け加えたり、数字を見直したりする必要もあります。

このような過程を経て、最終的に、全ての金融機関から同意を得て、同一の内容で変更契約を行なっていくことになるのです。

5 リスケに「弁護士」は必要か?

では、上記のようなリスケの交渉に、弁護士が代理人として入る必要性はあるでしょうか。

法人の民事再生や破産手続においては、必ず、弁護士が代理人として就任することになります。
一方、リスケの場合は、必ずしも弁護士が代理人にならずに、会社が独自で行なっているとか、税理士さんが資料の作成のみを担当しているというケースも多いと思います。

破産の場合などは、会社の資金は、基本的に全て破産財団に組み込まれていきますが、リスケの場合は、限られた資金をその後の事業資金に使っていく必要がありますので、少しでも資金を確保しておきたい、逆に言えば、弁護士に費用をかけたくないという気持ちも働くのではないかと思います。

私の経験としては、金融機関の数が少なく(1行か2行程度)、リスケを求める負債総額もそれほど大きなものでなければ、弁護士をつけずにリスケの交渉を行っても特に問題はないことが多いと思います。

しかしながら、複数の金融機関を「平等」に取り扱いながら、シビアな交渉をしていかなければならない場面では、やはり、専門的な弁護士をつけていくことは、あなたの会社にとって、大きなメリットがあると思います。

経営改善計画の作成にも、専門的な視点が必要となることは言うまでもありません。

6 まずは弁護士に相談をしてください

弁護士に依頼するかどうかは、状況によって考えれば良いと思います。
まずは、信頼できる弁護士に、あなたの会社の状況を伝え、どのような方策が取れるか、また、リスケを行うとしても、金融機関に対して、どのようなアプローチをするかを相談してみるのが良いと思います。

リスケを求めるかどうかというこの段階は、「まだ弁護士に相談するほどの状況ではない。」と思われる方も多いと思いますが、それでも、一度は専門家に相談してみることは、決して不利益にはならないと思います。

今後の事業のために、まずは相談をしていただくことをお勧めしています。

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